チーム・バチストゥータの栄光

200万部のベストセラーになった原作が結構イケたので、気になって映画も見に行ってみた。が、60点。原作以下

原作の持ち味だった聞き込みテクを用いた心理分析のウェイトが減ったのは残念。基地外役人白鳥も面白く描けてるけど内面的な彫り込みが少なくて魅力が半減。粋な名脇役だった高階病院長がただの狂言回しになり、アクセントとして効いていた黒崎教授の「よい俗物」みたいな性格も表現が足りない

主人公の愚痴聞き医者・田口に竹内結子を配役した点は良かった。まぁ男同士のコンビのが面白いっちゃ面白いけど、劇全体で男女バランスがとれる
白鳥初登場シーンはソフトボールの試合に白鳥が乱入するって流れで、原作よりは絵になるかな?原作もたいがい唐突だし

ただまぁ致命的にオチが緩く、人物が浅い。原作は緩いオチを後日談でうまくフォローしていたが、時間の都合上かそれがなくなり、凄い脱力感にとらわれる。容疑者のうち犯人だけがあまりに話に絡まず、全く彫りがない。ミステリとしては返金レベルだった

映画化はうまく行かないことが多いが、この映画を見て原作を読みたくなる人は多分いない。原作ファンも見ない方が……
原作では田口、白鳥をはじめ登場人物それぞれに明確なキャラが作られていた。脇役までしっかり作り込まれていて(してなくとも役割はあった)、だから多少ストーリーにつっこみどころがあっても、引っ張りができた。人物と関係性の味で持ってたわけだ

でも時間の制約がその"味な部分"をつぶしてしまった。高階院長は本当に惜しい人材なのに。原作者が張り巡らせた様々な伏線をカットせざるを得ないのは分かるが、後日談のカットは……事件そのものに多少は厚みがあったのが、完全にただのKY殺人になってしまって痛恨のキワミ

1クールか特別枠でテレビドラマ化すべきだったな。映画にするには厚すぎる本だった