親父さん

「学際人」だの精神性だのなんだの、あれこれと言ってきたけど、結局のところ、僕が目指しているのは父なのだ。僕がどう足掻いても及ばない「考える力」。その虚飾のない自然な在り方。父が、恵まれない環境や不遇を乗り越えて、その知性で築き上げた豊かな精神世界。それに対する尊敬と憧れ。僕が「自分さえしっかりしていれば道は開ける」と思うのも、結局全て父の言葉だった。ベンチャーな先輩の言葉を信頼しているんじゃない、「本当の意味で、考える力があれば、どこに行っても大丈夫なんだよ」という何度も言われた言葉、先輩の言葉はそれを保証するものだから、喜ばしかっただけだ。結局、父の
 親父は自分の師であり壁であり柱だ。母親にもこないだ「生き写しみたいな考え方をしてる」といわれた。親父が死ぬことを、僕は受け入れられるだろうか。今父がいなくなったら、僕は発狂するだろう。母が死んだら、と想像したら、むっちゃくちゃ悲しくなるが、父が死んだら、と想像すること自体が、怖ろしい。父のいない世界は、あまりに空虚すぎる。僕は父の代わりを探して駆けずり回るだろう
 要するに恐らく、僕は決定的に親離れしていない。親への反抗期はなかった。自分より両親と仲がいい男子は少ないだろう。そのめぐり合わせにすごく感謝しているとともに、失う時がただただ怖ろしい
 僕が一人暮らしに何の魅力も感じないのは、自分の家庭に対して全く何の不満も無いからだろうか。依存しているんだろう。孤独な生活を営む自信は、ノウハウ不足以前の問題として、心理的に無い。……一人暮らしなんかせずに、寮に入ろうかな。僕には孤独を紛らわしてくれる、信頼できる人間が側にいてくれる方が性にあっている。Runaが僕を「さびしがりや」だと言った時は「そんなまさかw」と思ったけど、認める。間違いなく僕は寂しがり屋だろう


「親父に自分を認めさせたい」
 それが僕を親父と同じような道に駆り立てているのだろう。なんのことはない。結局は父を追いかけているんだ。父に認めさせるために、僕は……

 親父は自分の内面に世界を作った。けど、結局「社会的な幸せ」には、たどり着けなかったんじゃないかと思う。
 親父と僕の共同制作である「僕」が、親父のやり方で、社会的にも、精神的にも、幸せになる。それがきっと、僕に出来る最大の恩返しなのだろう

 父に認められ、彼を超えること。それはきっと、僕が避けて通れない使命だ