説明上手になる本

説明上手になる本―相手の頭にスンナリ入る (PHP文庫)

説明上手になる本―相手の頭にスンナリ入る (PHP文庫)

説明、どうやればいいのか気になって少し本を。古本屋で安かったので買ってみた
内容は常識的であり、当然のことでさえある。ハウツーにありがちな反復によるページ増幅作戦も散見。とはいえ灘生は総じてプレゼン下手だし、自分自身しっかり飲み込んでおきたいので、ちょっとダイジェストしておくことにする


<コミュニケーション能力>
(1)自己把握力:自分自身の能力を客観的に掴んでおくこと。自分に誤差があったら、作戦なんて立てられない
(2)傾聴力:耳で聴くだけでなく、表情とか口ぶりとかから相手の背後の感情や傾向を理解する
(3)明確な表現力:言いたいことを的確・簡潔に、コンテクストに頼らずに表現する
(4)感情処理力:感情を抑える。特に怒り
(5)自己開示力:自分の考えや気持ちを偽らずに打ち明けること。相手への信頼、そして自分自身の判断に対する確信が持てないとできない。器の大きさが必要

<結論がすっきり伝わらない理由>
①自分でわからないことは、相手にもわからない
 当たり前だけど、つい甘えてしまうのが人情。質問を返された時答えに窮するようでは、言ったこと全てへの信頼性が崩れてしまう。徹底した調査や事例集めは重要で、その努力をプレゼンの端々に嫌味にならない程度にちらつかせてみるのも有効。よく勉強しておくに越したことはない

②何を言いたいのか、訴えたいのか明確じゃない
 人間のやること全てにおいて「目的」は大切
「どういう相手に対して説明するのか」、「なんのために説明するのか」、「説明の結果として何を期待するのか」、「そのために何を伝えなければならないのか整理」、「どのように説明するか構想」 これぐらい芯をしっかり定めておけば、多少脱線しても自然と戻ってこられる

③あっちこっちに話が飛んで、焦点が定まっていない
 イメージを思いついて反射的に言葉がまとまらないままに言っていくような人がいるが(長嶋茂雄的に)それでは論理的な説明はほど遠い。何考えてんだコイツがオチ(笑ってもらえるかもしれないけど)

④物事を説明する順序がメチャクチャ
  人間の頭の働きは、因果関係や時間の流れなどの法則性に貫かれている。それにしたがって話せばいい。こんな風景を説明する時に、真ん中の集落→前のお花畑→遠くの山影って説明するのと、花畑→集落→山影で説明するのと、どっちが理解しやすいか

⑤スジや贅肉が多すぎて、話のポイントが見えてこない
 話すべき内容を理解していても、喩え話やら脱線が的外れで伏線として機能しないことも。そうなると逆に相手を混乱させてしまう。
 原因として「内容さえ理解していればなんとかなる、と思って準備不足」「説明のイメージが描けてない」「ポイントを実は掴んでいない」「どういう説明が効果的か研究不足」「聞き手の反応に鈍感」など。漫談じゃないんだから、簡潔を旨として、ほかの部分は「効果」をよく考えて話すべし

⑥誰にでも分かる言葉を使っていない
 小学生相手に「お兄さんは様々な問題を抱えてくるクライアントにトータルソリューションを提供する仕事をしているんだ」なんて説明しても意味がわからないわけで。文脈上の語義を的確に伝えようとするあまり、難しい言葉をそのまま使ってしまうと逆に全く理解してもらえないことも。そこを上手く換言するのが腕の見せ所


<反論されやすい説明>
 説明がすんなり通るか通らないかで、仕事の進み具合はだいぶ変わってくるし、劇的に変化がある

要するに「相手のことを考えればいい」のだ。んなの当たり前なので、どういう手があるかというと
①相手の時間、気分を見計らう
 常識、というかマナー。いくら正論吐いてても虫の居所が悪ければ無意味・無駄でむしろ損
②相手の好みの言葉を使う
 日ごろから観察してみる。はっきり断定する方が好まれるのか、それとも考える余地を残して濁した方がいいのかとか。専門用語を使いまくったほうが感心してくれる人もいるし……
③相手のペースにあわせる
 面接テクで質問者の口調のペースに合わせるというのがあるが、それに似ている。自分ひとり早口でつばを飛ばして喋っても仕方が無い。「聴いている相手を観察する」のは非常に大事
④論理的な話をする
 当然である。論理的って何かは後述
⑤具体例・データを出していく
 観念論では具体的施策や決断に結びつかない。しっかりと具体的なことを言うほうが、向こうもそこを足がかりにして考えやすい。具体的なことを伝えることで、向こうの思考をそれに引きずることもできる
⑥たとえ話をまじえる。ユーモア
 これはテクニック。うまいひとを見習ってみるとか。「地球のこれまでを一日としたら、人類誕生は23時何分……」とか、イメージしやすい
 自分の中でイメージを膨らませておく作業が、たとえ話をするには絶対必要。頭の中にどれだけ色々なイメージがあって、結び付けられるかは、日ごろから色々なもののイメージに敏感に触れていく、作家的感性が必要と思われる。特にユーモア=知性って文化圏もあることですから
⑦実は従来から信頼を得ていないのかも?
 実は相手は、先日自分が落としてしまった牛丼のことを根に持っているのかもしれない……


<論理的説明の回路を強くするには>
 別に説明の上手い下手はスキルであって、頭のよしあしとは関係ない(ただし説明が下手だと頭が悪いと思われるが……)
①論理的説明のメカニズムを理解する
②創造技法をマスターする
③実際に何度も意識的に練習する


<イメージを描かせる>
①説明する事柄のイメージを膨らませる
 説明する事柄をしっかり観察して、要点を掴むことが必要。正確に捉える目。
②イメージ化のプロセスをよく理解しておく
 論理的に「これこれこーゆー要素が共通してて……」みたいな。要するに比喩って身近なものにひき付けることだし
③どうすれば相手がイメージを描けるか考えておく
 比喩やたとえ話は思いつきではないし、ある程度計画的なもの。計画するには論理性が必要で、「俺が相手なら……」という風な見方を常にする必要がある
④話の構成を整理しておく
 おなじ比喩であっても文脈に引きずられて意味がずれたりすることも。全体構成の中でいつ伝えるかとかは非常に重要
⑤話の順序を乱さない
 同上。いきなり比喩を差し込んだりして、向こうの思考をぶった切ったりしてはいけない


<話の組み立て>
①何を言いたいのか、訴えたいのかというテーマ
②テーマを支持する主題
③主題を支持する中題(主要な論点)
④論点を支持する小題
⑤小題を支持する支援文
大体この5つで構成していく
中題は多すぎてもいけない。伝えたいことは絞りに絞っていく。多くて5つぐらいしか、聞き手は分かってくれないとか


<論理的説明のプロセスとは>
1.目的・目標の設定
 計画がないとほぼ確実に失敗する
2.情報収集・記憶の検索
 事柄の内容、周辺情報、相手の性格や立場、説明の時間帯(昼飯後でみんな眠いとか)、結果の予測・評価などをなるべく多く集めておく
3.切断
 集めた情報をいったんバラす。カードとかを使うと吉
4.組み立て
 聞き手に分かりやすいように組み立て、話の順序を考える
5.実行
 分かりやすい言葉で、はっきりと話す。聞き手の表情や目・身体の動きなど、反応をしっかりと見ないといけない(そのためにはレジュメを棒読みとかじゃ絶対いけない)
6.反省
 ちゃんと実行時の反応とかから、教訓を搾り出す。これをするためには客をきちんと見なければいけない

資料を棒読み→客を見ない→反応が分からない→反省点が見つからない→(ry
なんてループにはまらないように。大体聞き手は文盲でもないんだから、別に資料に載ってることを読み上げてくれなんて頼んでいない。というか資料に載ってないことを話さないと注目なんて得られるわけがない


<変化の中の統一、統一の中の変化>
 主題の統一に、すべてのファクターを従わせる。何のために何を誰にどのように説明したいのか?そのために何が必要か。具体的事例としてはどれが適切か、この言い回しはマズいんじゃないかとか、口調はどんな感じがいいかとか……あれこれ考えて、一つの目標に焦点を合わせる。これが「統一」
 言われてみれば当たり前なのだが、大半の人は「何を考えればいいのかよく分からない」という感じなのではないだろうか?考えるべき要素を見つけ出せないというか
 一方その要素一つ一つに独自色を出し、魅力を生んでいく。それが「変化」。やっぱりみんな変化に魅力を覚える。それが心を駆り立て、最終的に変化に導かれて焦点の主題に行き着く。観念論ですが

 たとえば絵を考えてみるといいのではないだろうか?
変化:色、形、明暗、大きさ、線……
統一:変化を配置し、構成して生まれる構図・主題


<構成について>
相手を笑わせたり感動させたり魅せたりしたいとき。要するにスピーチは古典的な「起承転結」がふさわしい
一方説明は事柄をよくわかるように話すことである。そのため「序論・本論・結論」の三段階法がふさわしい
序論が1、2割。本論が7割から8割。結論は1割程度が適当。最も説明する目的によって配分は変わる

「序論」:相手の注意をひきつけ、説明するテーマについて大まかなアウトラインを示し、聞き手がこの話に何を期待するべきか分からせておくこと。「予備知識を与える」「比較対象になる実例などを話す」「説明の展開の順序を話しておく」などが中心
「結論」:終わりよければ全てよし。裏もまた真。本論で展開された内容を要約、言い換え、序論の目的と結びつける。本論の一般化あてはめ、今後にむけての意見を述べて問題意識を植え付けるなどが挙げられる。注意点としては何を話すにしても、本論をまんま蒸し返すようなことはしてはいけない。心理的に落ち着かない気分にさせてしまう
「本論」:前述の5段階を意識する。まぁ細かい話は後に

当然TPOに応じて形式は変えていい。さっと序論を飛ばすような場合もあるし、そこは空気を読んで柔軟に対応できる範囲


<組み立て>
情報をいったんばらしてから再構築していくのが大切。その時に頭の中だけで処理するのは困難。頭って順序だてて考えていくものだし……
てなわけでカードを作ると効果的。集めた情報を一点ずつ惜しみなくカードに書いていって、「これは中題にふさわしいな」とか「こいつでこれを強化できる」など、あれやこれやと考えながら構成していくうちに、形になる
こういったテクニックが創造技法と呼ばれるもの。創造とは「異質なものを組み合わせて新しいものを生み出す」という意味であり、うまく合致している。K西がやらせてるアイデアプロセッサもそれの一環
以下その実例


ブレインストーミング
 とにかくアイデアを出しまくる。このとき、一切批判してはいけない。「これはおかしい」とか考えちゃ駄目。質より量とばかりにアホらしくて自分であきれるようなものでもいいからガンガン書いていく

②KJ法
カードを使って様々なデータを書き出し、内容が同じような物事に応じて整理していく方法。名前の由来は考案者の川喜田二郎氏のイニシャルと思われる

マトリックス
縦軸と横軸に変数を設定し、それに応じてカードを配置していくようなやり方。現状の分析をしたり、テーマやポイントの絞込みに便利。慣れないうちは変数の設定が難しいかもしれない

④説明展開法
 説明の序論・本論・結論の大きな流れにあわせて、カードを配置していく。ひとまとまりにしたり、あれこれと工夫していく


 なんだかんだ言っても、実践が大事だという。僕もやってみます


<3S>
simple, smooth, smart
説明に必要なもの

1. simple(簡素)
 簡素であるためには内容を絞らなければいけない。事前準備必須
2.smooth(流暢)
 展開の流れを崩さない。喋り方なども大事
3.smart(洗練)
 何度も何度も構成を考え直す。1,2の純度を高める作業のこと。意外と忘れがち


<聞き手心理>
自分の気持ちを振り返れ、といったら簡単なのだが、問題意識をもって講演を聴いたりしていないと、自分がどういうとこに不快を感じたかなんてピンと来ない。
①聞き手は自分の直接的に関係するものにしか惹かれない
②聞き手は自分の利害関係から物事を見る(ビジネスでは)
③話し手が聞き手に関心を持てば、聞き手も話し手に関心を持つ
④聞き手のことを話題にすると耳を傾ける
⑤聞き手はあきやすい
⑥聞き手の心はいつだって揺れ動いている
⑦聞き手は騒音などの外部環境で気が散りやすい

自分のしてほしい説明を軸に、相手がしてほしがっているだろう説明、これをしっかり押さえるのが大切。敵を知り己を(ry


<パラグラフトーキング>
 分かりやすい論説文は段落ごとにしっかりトピックセンテンスが作られている。パラグラフ内でのセンテンスの構成、そしてパラグラフごとの相互関係。英文を読むときに必要なスキルは、話す時にももちろん流用できる


<順序>
空間の順序
重要さの順序(大切なのから)
既知から未知へ
因果関係(結果→原因、原因→結果。結果が先のほうが分かりやすい)
一般と特殊(両方あり。特殊な事例に魅力があって、つかみにうってつけだったりしたら特殊→一般なども)


<均等に話すな>
相手にしっかり伝えたいがために、全部のことを均等にしゃべろうとすることが往々にしてある(僕は)でもそれはコミュニケーションの場面では逆にマイナスで、相手は「何がいいたいか」はっきり強調してくれたほうが、多少乱暴になっても理解してくれる。細かい部分はあとから埋めればいい
人は効率的なもので、話しているうちに無意識に軽重をつけたがる。その欲求にそぐわないと「結局何が言いたいねん」と聞き手は疲れて苛立って、話し手に悪印象を持ってオワタとなる


<冒頭でイメージを描かせる>
 「イメージを描かせるとは難しいことだ……俺にそんなユーモアなんてネーヨ」と思ってしまうが、別に何も小説家的なスキルが必要なわけではなく、さっさとパワーポインタで画像見せちまえば一発でイメージなんて描けてしまう
 どういえばいいか迷ったら見せればいい。便利な世の中である。とはいえ、話している最中にずっとそれを見せっぱなしだったり、自分でずっとそればっかり見てたり、タイミングを間違ったりすると、肝心の喋ってる内容が相手の耳に入らなくなるので注意。ひとしきり見せたら消すのが意外と大事


<数字使え>
 数字を使いまくると嫌味になったり、わけがわからなくなったりするが、きちんと定義して「これからこう分かる」と親切に解説していけば、具体的なDATAは信頼感・説得力を高める上で大いに役立つ。当たり前ではあるが、観念的な話題になるとついつい忘れがちになる
 たとえば領土問題とか、どういう数字を出せばいいのか分かりにくい話だが、「竹島を失うとこれだけの経済的デメリットが……」とかそういうのを入れるだけで、「ただのオッサンの文句」から「紳士の論説」へと格上げできたりする。「きちんと調べてきました」というアピールにも非常に有効だ
 とはいえ数字は覚えにくい。大事な数字は何度も口に出して言うなりした方がいい。印象づけてほしいわけだから、可能な限りアバウトに、かつきちんと比較対象も用意するのが大事。円なら多少どうにかなるが、ドル建てだったりすると分からないし、これがレアルだのルーブルだのになったらさらに比較対象がないと理解できない
 つーか人間は全てのモノを相対的にしか見れない。絶対的指標である数字とて、何かとの差が無ければ何の意味も無い。同じ10万円でも、今と明治時代じゃ全く違うのだし


<メリット・デメリット両方話す>
 冒頭の自己開示に繋がることだが、きちんとデメリットを話すことは説得力、信頼などの面で最終的に収支はプラスになる(そのデメリットが全部ぶっ飛ばすほど致命的じゃない限り……)
 善悪両面はなすことで、全体像がつかめるようになるのは大きいプラス


<質疑応答も含めて説明>
 ここでボロを出すと全て御破算。シミュレーションと綿密な調査が重要になってくる
 自問自答していくのは大事。その方が頭に入るし


<ひとはみためがきゅーわり>
①服装がきちんとしてる
②相手と顔を合わせたら笑顔
③椅子にはどっかり座らず、身体は若干前に傾けるぐらい
④力強くはっきりと物申す
⑤視線は資料になるべく向けないで、相手を見て話す
⑥ペン回すとか頭かくとか腰を振るとか、余計なことしない。ゆったりとリラックスしておく
⑦強硬な反論や、意地悪な質問に感情的になっては絶対駄目


<日ごろの行い>
 説明、は世の中に溢れかえっている。見習おうと思えば何からでも見習えるものだ。キャスターの話し方であるとか、ニュースの構成であるとか……
 比較がないとどこが悪いかとか、いいかとか、あまり分からないかもしれない。だからこそ問題意識を持って、様々な事例を分析的に調べておく必要がある

 問題意識を持って、様々なものから教訓を引き出していく。「しずくのなかに」ではないけど、自分が変われば世界は変わるわけで……

 頑張っていきまっしょい。とまぁそういう感じの本でした




 要約をしようとすると、結局いつもダイジェストを書いてしまう哀れな性分。とはいえ、こういったのって具体が大事なんだしなぁ