イビチャ=オシム

今回の情熱大陸オシムだったわけだ。にわかサッカーファンとしては見逃せない。オールスターで遅れてくれたおかげで頭から見れてよかった。

 イビチャ=オシム(65)はボスニアや旧ユーゴスラビアで知らぬ者のない人物だ。サラエボに生まれた彼はサッカーだけでなく頭もよく(数学と語学)、ボスニアを愛する彼はボスニアからも愛され、神童の名をほしいままにした。

 現役時代は鋭いドリブルと的確なポジショニングを武器にFWとして活躍。当時のユーゴスラビアの代表的選手で、世界オールスターのようなのにも選ばれ、ペレと戦ったこともある。

 監督としてはこれまで指揮を執ったチームを全てそのリーグで優勝に導き、90年のW杯イタリア大会では国内の不穏な情勢とは裏腹にユーゴスラビアをベスト8に放り込んだ。

 しかしボスニア紛争サラエボが戦場と化し、妻子と切り離された彼は「自分がユーゴスラビアにできる唯一のこと」と言い残し、代表監督を去った。

 そしてクラブチームを一つ経てジェフ千葉に招かれ、グラウンドの状態や選手一人一人のその日のコンディションに臨機応変に合わせ、スタミナに重点をおきながらも実戦的な練習を取り入れ、ジェフ千葉を優勝に導いた。居残り練習や早く来ての練習は一切認めない。自分の練習を100%こなせば必要なことは全て得られる、それがオシムの信念だ。

 あなたのサッカーは「走るサッカー」だと言われているが、と聞かれたオシムはこう答える「逆に教えて欲しい。走らないでできるサッカーとはどんなものなんだ?子供が手で遊ぶおもちゃのサッカーゲームだって選手を走らせるじゃないか」

 オシムの言動はウィットに富みながら、冷徹に現実を見据え、常に的確だ。オシムは毎日平均してサッカーを2試合観、対戦相手や他国の戦略を研究することを忘れない。「彼の頭脳は常に回転し、苦境の中にあっても常に最善な手を見いだす」オシムの下で育ち、イタリア大会でのベスト8に大きく貢献したストイコビッチは語った。

 監督にふさわしい沈着さと知性、試合中にかいまみせる情熱、理論に貫かれ統制された編成や練習。番組を観ている限りでは日本代表の現状に、彼ほど適した人物はいないように思えた。にわかファンだから監督なんて全然知らないんだけど