柳沢のキモチ

 クソ暑い真夏日の体育。暑さに血迷った1組は1時限目というイレギュラーを活かし、体育をソフトからサッカーに変えてしまった。

 W杯の影響でサッカーがやりたかったんだろう。サッカーが得意とはいえない私でもやりたかった(だから先行ってボール蹴って悦に浸ってたんだが。多分ムードができたのはそのせい)のだから、いわんや得意な香具師をや。

 普段はしんどいのでGKをやってるが、1時限目ってのもあり乗り気だったのでポジションは中盤から前のサイドとする。

 基本的に私はあらゆる精度が低い。シュートはズレるし転がるし、ヘディングはあさってへ飛ぶ。

 まぁだから普段走らないんだが、今回は頑張って拾いに行ったりしてみた。

 んで15分くらいだったかに問題のシーン。ゴール脇のMにパスが回り、センタリングの予感がした俺はこれ幸いと逆サイドに走り込む。予想的中。GKの前を通ったパスは上手く目の前にバウンドしてくる。さすが冬場はサッカーばっかやってる野球部だけに見事なパスだった。

 ゴールキーパーは見えない。よっしゃと足を上げたまではよかった。いや、その段階で足はコンマ何秒か遅く、インステップに当たるべきボールは足の甲へ。そしてぽんぽんとライン外へ転がっていった。



 アマチュアの私でもショックだ(まぁポジショニングはよかったんだよぉorz)柳沢はさぞ惨めだったろう。

 彼は帰国した時カッパをかぶって飛行機から降りてきたそうだが、案に相違して水もトマトも生卵も鉛弾も飛んでは来なかった。出迎えなんてほとんどいなかったのである。

 他の日本代表も惨めだっただろうが、柳沢の惨めさはそのウン倍だったはずだ。泣けるぐらい。

 やっぱり勝たなかったら出迎えは来ないのか。しかし案外日本人も薄情だ。苦労して帰ってきた代表にその仕打ちはないよなーと。