あまり意味のない徹夜

 なんか合格体験記を書いてたら止まらなくなって徹夜してました。製作時間は5時間ほど。

 どうせ長すぎて載らない気がするので、せっかくだから受験が終わった段階での各科目への私見を述べる。


【総合的な話】 「あるべきものがない」ことを知る
 具体的なプランについては本当に人それぞれだし、冒頭で書いたように「自分が何を分かってないのか」を考えることに尽きます。それが分かるには、知識がある程度体系化されている必要があるので、当然ひとまずなんであれ、必要最低限の知識をつっこんでおく必要があるのですが、それに加えてあらゆることに対して多角的に答えを探る姿勢を日々キープしとくといいと思います。友人関係でも、学校内の出来事でも、自分の感情に対しても、腑分け作業が出来るわけで、地歴で覚えた分析角はワリと使えることもありますよねー。
 総じて必要なのは論理的な正確性です。形を変えたりしていますが、全ての科目に通底していると思います。省力的にある程度の点が取れてる人はそこら辺の力が何らかの事情で高いのかもしれません。この「論理力」が最終目的の一つであると同時に、高ければ高いほど入力あたりの出力が増大する、そういう努力主義者にとって悲劇的な構造が存在することは無視できないと思います。これを「基礎」と言い換えると一気に陳腐になるんですが、単純に「基礎」って書いてある問題を数こなして、勝手にどうにかなるものか疑問です。


【現代文】 ダイソン掃除機的美
 具体的なやり方は林先生に従ってください。他のお上の言うことには間違いがございますから。S子ちゃんの解答や作問に正当な批判を行い、彼と議論するなどによって、健全な批判精神と鋭い感性が養われることでしょう(笑)。できたら評論文を自分でも読んでおくことです。高2の間はちゃんと新書とか読んでおきなさい。ホント、受験ロボになるのは虚しいことですよ。(私のように最後まで徹しきれないのも人間としてアレですが。)構造主義とかその辺のキーワードを必ず知っておくべし。「あぁフーコーだ」とか分かれば、だいぶ気持ちに余裕ができるはずです(分かったからと言って点数が取れるわけではないですが)。

 この科目は「現代文の勉強」をしたからといって伸びるとは限らないのが問題です。他の科目をきちんと勉強すべきな気がします。いうて、さほど点数差がつくものでもないですから。むしろ地歴で鍛えた分析眼が役に立つことだってあるし、古文や英語で鋭くした言語感覚が役に立つこともあれば、数学で身につく全ての条件に配慮した論理構築能力が役に立つこともあると思います。下手すると、現代文に労力をかけない方がよかったりして(笑)。まぁそこはそれぞれの事情次第です。余力がある人は、一度「小論文」の試験を解いたり、問題と解答だけでも見たりすると、論文の展開や構造、最近の思索課題などが分かって面白いかもしれないですね。あ、現代文がホントに勉強したくないって人は、夏期講習の3日間で真剣に決めてしまうのをオススメします。

 現代文ができねぇと嘆く人の多くが「文章力が無いから俺にはこんな綺麗な回答かけん」とか言うんですが、これは何故綺麗か考えてないだけです。林先生の文章の美は「機能美」であり、論理性の高さが溢れている証左です。ドギュゥ--z__ンとはまった表現が思いつくかは感性の問題ではあるのですが、自分の文章が下手だとしたら、端的に言って頭の中が整理されてないだけです。時間が無いのもありますが。ちなみに駿台の文章が整理されて見えるのは物があんまりないk(ry

【古文】 言うて、日本語ですので
 とりあえず助動詞。「べし」とか「けむ」とか「めり」とか、そういうニュアンスを確実につかんでおく。他の単語も、辞書を引いて「あぁ、この言葉には3つの意味があるんだー」じゃなくて、全部の意味を導けるような概念をイメージすること。その漠然とした雰囲気を上手に具体的な日本語に落とし込んでいく言語感覚があるなら可能。そういう言語感覚に自信が無いなら逐語訳的な気合戦術をとることになりますが、正直非効率だと思いますね。勉強する時は、常に言葉に対して鋭敏であることです。背景知識もきちんと整理していくと、展開が読みやすくなるし、シーンがより鮮やかにイメージできるでしょうね。何度も「平安人死ねばいいのに(死んでるけど)」とボヤキながら、どんな突拍子もない展開にも対応できるようにしていくことです。結局、トップクラスに古文が出来る人間でも、100%の確信を持って問題を解けるわけじゃないですから。

【漢文】 訓点があるんだから
 句形を覚えて演習、以上。訓点があるんだから読めろよ……、というのが中学時代に定期試験が全て白文だった灘高生某の本音です。基本句形だけでも、例文をいくつか白文で書いて、訓読する練習を積んでおくといいかも。ボーっと過去問やるより、色々練習メニューを変えて挑戦する方が勉強にも張りが出るのではないでしょうか。
 漢字はなんてったって表意文字で、形声文字や会意文字は知らなくてもどんなカテゴリの文字かくらいわかりますし、古文と違って超展開が少ないので、勇気を持って推測で押すのも必要です。そういう練習もしてくといいでしょうねー。

【数学】 パターン以上の何かが見つけたかったです
 残念ながら私は気合で対処しようとし、体系的な取り組みが出来なかったので、他の人に任せたいとこです。灘高に限っていえば、ただでさえレベルの高い理系の連中と同じ問題をやらされ、「数学できない奴はなんかなぁ」的な価値観すらはびこる環境で生活してきたので、当人に苦手意識があっても、世間では十分出来る方だったりします。完答の数ばかりが呪文のように唱えられる文系数学ですが、まぁ部分点稼ぎも大事だから頑張ってくださいな。日ごろから計算ミスつぶしを意識すること、速さよりは丁寧に答案を作る練習をすることでしょうか。ただ答案の論理破綻とかは自力で気づきにくいので、渾身の解答を何度か先生に添削してもらうのもありだと思います。

3Cの領域についてもやっておくと、なんか風格がでます。赤チャートだと課程変更で3Cに行った条件付確率なんかも掲載してくれていますが、「分数関数の微分」が無い。これは本当に有用です。絶対に調べ出して覚えてください。加えて分数関数のグラフを書けると、特定の問題が作業ゲーと化します。ついでに極限の基本をこなしておくと、答えを予測したり検算したりするのに使えます。回転行列なんかも時々有効ですが、汎用性は低いですし、公式が覚えにくいです。

【英語・筆記】 出来る奴が伸びる資本主義
 単語単語といわれる科目です。古文でやったように「ニュアンス」を捉えるほか、英語は日本語よりも語ひとつひとつの用途がかなり限定的なので、なるべくしっかり単語帳を見て、「プラスの意味でしか使わない表現」とか、そういうのに意識を払うといいです。

英熟語はターゲットとか買って敢えてやる必要があるかは微妙な気がします。単語帳についてるのを覚えるくらいでいいでしょう。むしろtakeとかgetとかbringとかupとか、そういう基本単語のニュアンスを徹底的に覚えこんで、推測力を高める方が合理的でしょう。英作文を書く時なんかにも役立つはずです。この語はフランス語由来とか、ラテン語由来とか色々考えて、語源とか接頭辞・接尾辞に詳しくなっとくと、複雑なラテン語由来の複合語なんかも覚えやすくなるし、2010年度の新傾向、【語形変化】なんかにも対応できるでしょう。

 正直なんか文章あんまり読めんわ、ってレベルのお若い方は、取り急ぎ全部の文章にSVOC書きまくり、関係詞の節をくくり、that節をくくり……と、構造解読を敢行してくといいかと。正直、修飾関係とか分かってないと単語をいくら脳に突っ込んでも、爆笑日本語書くことになるので、早いうちに構造の解析が出来るようになるのをオススメしときます。瞬間的な構造把握ができるようになれば、速度や精度が大きくあがりますので、不安があるなら絶対にやってください。構文できてるかどうかで普段の勉強で時間当たりに得られる成果が明らかに変わるので。

【英語・リスニング】 量。
 正直、私は出来ていないです。一般論としては、単語レベルや速度など自分のレベルに合った教材でやることですかね。ある友人は海外の風刺アニメを延々と見て、「社会勉強とリスニングを同時にしているのさ!」と嘯いていました。ある文系一位はオードリー・ヘップバーン主演の映画を延々と見ていた気がしますが、気のせいでしょう。

FAQとして「いつから始めたら間にあいますか?」ってのがありますが、そういう人によるとしか言いようの無い質問を、口に出さない感性ぐらい持っておくと無難です。手が空いた時期に気合を入れて集中的にやっておくと、習慣としても続けやすくなる、と言う意見も最後に紹介しておきます。

【日本史】 原理的に考える。原理は教われ。
 灘高には日本史の教員が三人いらっしゃいますが、どの方の授業も非常に面白いですし、受験を超えた視野を持った歴史教育をなさっているので、灘高に限って言えば学校を最大限に活用してください。野島先生の講義で「生まれ直せ」と罵られるような誤解をしていても凹まないことです、いや積極的に凹んで覚えておいてください(国司は何人もいます。武士は将軍に年貢なんか送りません)。

 授業とハンドブックなどで書いてある「肝」の部分をガッチリ把握しておけば、説問に文章があるならそれほど間違えないですむでしょう。政治体制、構造、政策、流通、規模、担い手、生産力、地形、気候、年代、風潮……とりあえず過去問演習を数多くこなす中で、「考えるポイント」を整理することです。「この概念が来たかッ!?その発想は無かったッッ!」って体験を、何度も何度も繰り返すことで、鮮やかなイメージが作られていくと思います。

野島先生のいうところの「分析の視角を増やす」って奴です。なるべく早く論述問題に、教科書を引きながらでもいいから触れて、その視角を身体化してください。そしたらバラバラだった多くの単語がストーリーやアナロジーのような有機的連関を生んで、色々な応用が利く状態になります。そうなったらもう、抜けないんですよね、記憶したことが。他の記憶との間に絆が出来て、頭にしっかと根付く、そんな感じです。(注:美化しています)

 後は時間内に構想し、枠に収まるように書くだけの文章力ですか。これについて僕は長年のブログ執筆で鍛えてきたので、あまり具体的な支援策は用意できないです。地理ほどの凝縮は要求されてない気はしますが。

【地理】 頭にテンプレを作る作業
 ぶっちゃけやることは日本史と似てます。分析の視角を増やすことが基本です(ていうか全てそうですね)。日本史と異なるのは、地理では「類推」がより重要になるということでしょうか。「知らんわそんなん」って問題で、「なんかインドのアレと構造は似てるし、そういう感じか?」とかアレコレ考えながら、それっぽいことを書いて、部分点を、首尾よく行けば満点をこそぎ取ってくる、そういう能力の多寡によって得点効率が段違いになります。多分。

 教科書は無いものと思っていいです。さっさと何か分厚い資料集を買って、全部読んでください。そして必ず高橋先生の地理のテキストとノートを手に入れましょう。「インドの少子化対策が中国に比べて進んでいない」の理由の一つが「連邦制で政策が徹底されない」というようなあたりで私は吼えたものです(何)。東大の問題は自力で解き、他の問題は解説をまとめるとかそんなやり方で私は消化しました。

 地理では、ひとつの事象にありとあらゆる要素が関連しています。そして問題にあわせて「ここは気候を記載すべきではないな……」と取捨選択するものだと私は考えています。関連度0%だから切るんじゃなくて、その関連度の事項を入れてたら枠が足りない。そういう便宜優先でカットしていくわけです。そういうわけで「行数が多すぎる」と感じる間は勉強が足りんと思っといてください。「行数が少なすぎるわ・・・」と思い出したら、分析が緻密になってきた証拠です。(小説とかに影響されて文章が冗長になった可能性もありますが)