テロリストのパラソル

テロリストのパラソル (角川文庫)

テロリストのパラソル (角川文庫)

 江戸川乱歩賞直木賞をダブルで取った空前の小説。小説読むのは久しぶりです。しかしリハビリには最高でしたね。300ページくらいを一日で消化できるほどに引きずり込まれた本です。てか神がかり的な名作だと思います。単純比較は出来ないもんですが、「容疑者χの献身」以上のインパクトでした。

あらすじ紹介めんどいのでウィキペディアから引用。

アル中のバーテンダー・島村は、20年前のある事件がきっかけで、名前を変え、過去を隠して生活していた。

穏やかな秋の日、新宿中央公園。いつものように、朝から公園でウイスキーを飲みながらウトウトしかけたその時、突然爆音が響いた。何らかの爆発物が爆発し、死傷者が多数出る。

事件の被害者の中に、かつて学生運動で共に闘った友人・桑野や、3カ月だけ同棲したことのある女性・優子が含まれていたことを知る。かつて桑野と島村は、爆弾事件を起こし、警察に追われていた。爆発現場に置きっぱなしにしてしまったウイスキーの瓶から指紋が割り出され、島村は今回の事件でも疑いがかかることに。否応なく事件に巻き込まれ、島村は犯人を見つけようとする。

 とまぁそんな話なのですが、この島村の造形が半端なく際立ってるんですよ。キャラ立ちとかいう次元じゃなくノンフィクションであるかのように。元警官のヤクザ・浅井や無宿人のタツハカセと言った脇役の光り方だって相当な技量。極力無駄な描写を省き、テンポと趣味のよい会話主体の文体は非常に粋で、全体を通した哀しさ(ただただ悲しいというのではなく、何か貫く光のような、いやそれがあるからこそなお深い哀しさが作られるんですが)は素晴らしい。
 ストーリー仕立て自体は少し臭さが残るんですが、エピソード的な伏線の使い方なんかはすごく絶妙。是非読んでください。この島村というキャラクターを存分に味わうべきですよ。ホントに。