課題図書礼賛

源氏物語の時代―一条天皇と后たちのものがたり (朝日選書 820)

源氏物語の時代―一条天皇と后たちのものがたり (朝日選書 820)

読み始めは苦痛だろうなと思っていたが、予想の3倍ぐらい面白い。限られた古典の資料、その意味不明な文章からここまで生き生きと人間を蘇らせられるのか、と驚きすら覚えた

古文は得意だが無意味な科目だなと思っていたが、調理の仕方次第でここまで瑞々しい、質の高いドラマになるんだな

生半可な小説ではなく、研究に裏付けられているだけになおさら一つ一つの心の動きに説得力と確かさがある。何よりそれを伝える作者の表現力の高さと感覚の繊細さに脱帽した
つい文章書くとき外見的な技巧や文体に凝りがちだが、やっぱ本物の力量を持ってるライターにゃ、そんな下らない個性づけなんぞ意味がないんだろう。へたくそが凝れば凝るほど、不自由で臭いだけの文章になってしまうのかも

話それたけど、O銛の出した課題図書ではオーヘンリー短編に次ぐ面白さ、歴史物なら随一。未読の人は騙された気で読むと吉