現社の解答うp


1.国際社会と国家


国際法には2通りある
1.国際慣習法(不文国際法):全国家間での共通前提(ex.公海自由の原則、外交官特権。最近は明文化の動き)
2.成文国際法:いわゆる条約・協定。当事者間に有効(cf.ウィーン条約法条約)


◎国際社会の形成
 三十年戦争*1終結後、結ばれたウェストファリア条約(1648)以降
 「主権国家*2」の登場によって成立してきた
 それまではローマ法王神聖ローマ皇帝を頂点とした「ヒエラルキー」体制。しかし史上最大の宗教戦争である三十年戦争の惨禍を経て、瓦解していった

 この頃はまだ「力こそ全て!弱肉強食の殺伐とした風こそが国際政治の醍醐味ッ!」というノリ。要するに北斗の拳無政府状態だった。
 後にイギリスを最高点とした「勢力均衡(Balance of Power)」による平和がもたらされるが、WW1では三国同盟(独、墺、伊)vs三国協商(英、露、仏)が全面衝突し、大惨事。「集団安全保障」の概念が提唱され、国際連盟が発足する


◎国際間の関係を平和裏に解決するためには何が有効か
 識者によると「国際裁判制度」であるとか
 現在IJC(国際司法裁判所)が国連の機関としてオランダのハーグに設置されている。通常の裁判所と異なるところは強制的管轄権がなく、当事者どうしが合意して初めて裁判が成立する点。「出るところに出て決着つけようや」「よっしゃ望むところや!」という展開のために存在する機関


国際法
 グロチウス(オランダ。1583~1645)「自然法の父」とも
 三十年戦争への嘆きから「正戦論*3」を展開した。主著に『海洋自由論』『戦争と平和の法』


国連海洋法条約で日本の批准が遅かった理由
 領海を3海里から12海里にしようぜ!+排他的経済水域200海里設定しようぜ!って条約。日本の漁業は遠洋漁業中心だったため、これやられると利益が減るわけですね。でも徐々に遠洋漁業が落ち目になってきたので、1996年に批准したわけです


◎中小国家が大国に対抗できる国際組織
 国連総会。一国一票なので、国の数が多いアフリカとか発言力でかいです


2.国際社会と戦争の違法化



◎勢力均衡論と集団安全保障方式
<勢力均衡論>
Balance of Power。互いの陣営(同盟を組んでいく)が同じ戦闘力ならつりあって、侵略戦争とかにならないよね!って考え方
欠点:互いの軍拡がどんどん進み、いざ暴発したら大惨事になること。てか実際にそうなった。冷戦でも米ソは相変わらずこの路線をやっていたけど、キューバ危機みたいなヤバイシーンは多かった


<集団安全保障>
敵も味方も全部含めて、「武力行使を慎む条約・協定」にサインし、この約束を破ったメンバー
を他のメンバーで袋叩きにする方法。現在の主流で、国際連盟・連合の基本的精神
欠点:国際的組織の拘束力の維持は結構難しい。国連の予算は東京都の8分の1だったり


◎戦争の違法化に至るまでの道筋
 戦争の違法化は1928年の「パリ不戦条約」で初めて成立した。ケロッグ・ブリアン条約とも言う。国家の政策手段としての戦争放棄を高らかに謳った記念すべき瞬間だったんだが、自衛戦争を認め、条約違反に対する制裁規定を欠くなど実際のところは形だけのザル法だった

 ともかくそれに至るまでには戦争観の変化があり、前述のグロチウスが言っていた正戦論、また「無差別戦争観*4」を経ている
 また当然ながら国際連盟の存在は大きく、ヴェルサイユ条約(1919)の第一条、国際連盟規約の条項などにも戦争否定は存在する。それが最終的に条約として実を結んだのがパリ不戦条約、ということだろうか。ちなみに63ヶ国が批准した


憲法9条第一項を英語で出すおwwwうぉっwっうぉっwww

Article9. Aspiring sincerely to an international peace based on justice and order, the Japanese people forever renounce war as a sovereign right of the nation and the threat or use of force as means of settling international disputes.
In order to accomplish the aim of the preceding paragraph, land, sea, and air forces, as well as other war potential, will never be maintained. The right of belligerency of the state will not be recognized.

 9条。日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

3.国際連盟国際連合

国際連盟はどのようにして成立したか。立役者は誰か。何でその国は加盟しなかったか
 国際連盟はWW1の反省から「集団安全保障」を実現するために作られた。ヴェルサイユ条約とか。
 頑張ったのはアメリカ大統領ウィルソン新自由主義を唱え、大戦終結のための「平和の14原則」を発し、ヴェルサイユ講和会議には自ら首席全権として出席して国際社会をリードし続け国際連盟の成立に尽力。しかし最後の最後でモンロー主義孤立主義)の立場から上院がヴェルサイユ条約批准を拒否。自分で作った連盟に入れないという皮肉な結果に終わった


国際連盟の欠陥
1.アメリカ、ソ連(途中一時期参加)など大国が加盟しておらず、実効力が乏しい
2.総会・理事会の役割がダブっている。また全会一致のため現実的効力のある決定ができない
3.ソ連、日本、ドイツ、イタリアなどが相次いで離脱。大国の暴走を止められない
4.国連と違い軍事的制裁を取れない(ex.イタリアのエチオピア侵略に対し、経済封鎖を仕掛けたが、こうかはいまひとつ)


国際連合専門機関とは?主な機関は?
「国際協力を目的とし、国連と協定を結んで連携している国際機関」のこと。理事会と連携してたりする
国連食糧農業機関(FAO)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、世界保健機関(WHO)、万国郵便連合(UPU)などが挙げられる

総会の特別機関が紛らわしい。UNEP、UNHCR、UNDP、UNICEF、UNCTAD、UNU、UNFPAなどは特別機関です

実は総会の補助機関なんてのもあってややこしいけど、総会に対して補助機関は、国会に対して委員会と同じような存在。特別機関とは全く役割が違う


安保理の特権、国連軍
 安保理には「平和への第一義的責任」があり、総会より優越的な権限がある。総会は憲章にある範囲の全ての問題を取り扱えるが、唯一安保理の取り扱っている紛争については口を挟めない。
 安保理はご存知Permanent5と、非常任理事国(任期2年、毎年5ヶ国ずつ改選)で出来ていて、常任理事国には拒否権*5があり、実質事項の決議には常任理事国全てを含む9ヶ国の賛成が必要になる*6

 1950年に、アメリカが総会に働きかけて「平和のための結集決議」を採択させた*7ことで、安保理が機能しない場合には、総会が「緊急特別集会」を開いて侵略防止の勧告が出来るシステムが出来ている

 ちなみに正式な意味での国連軍は「憲章43条に基づき、安保理と加盟国の間で結ばれる特定協定をもとに編成される軍隊」なんですが、実際は形骸化していて、今日一般に国連軍といわれているのはPKO(平和維持活動)*8で派遣される、PKF(平和維持軍)を指しているのがほとんど。



4.時事問題
イラク特措法違憲事件名古屋高裁判決
   「対イラク戦争とは」
 アメリカの藪大統領と周りのネオコンの方々(ラムズフェルド国防長官とか)がテロ国家への制裁じゃー!と言ってやらかし、大量破壊兵器が見つからなくて批判されたり、新兵器使いまくって人員削って、人手不足になってバクダッドの治安が守れなかったり、フセインの絞首刑がTV中継されて真似して死ぬガキが出たりした戦争のこと
 「世界のヒーロー」アメリカの単独行動主義(ユニラテラリズム)に水をぶっかけた結果になっているわけです


   「多国籍軍の行動は違憲?」
 いや他の国の行動が日本の憲法に引っかかるとか言っても意味ないんじゃ?と混乱した方がいた。日本語不如意のミッチーの面目躍如。とりあえず多国籍軍の行動に日本自衛隊が乗っかるのは違憲。戦闘行為に参加しちゃいけません


   「裁判官は憲法のどのような権利に基づき違憲判決を下したか」
 これもまた分かりにくい。とりあえず9条1項「武力で国際紛争解決しちゃらめぇ」ってのに引っかかってるんだが、それがどう権利に結びつくのか?
 記事の左下の方に「平和的生存権」の話があるが、これは多分「自衛隊員が戦闘地域に放り込まれて不当に生命の危機にさらされている」っていう論拠になっているのだとは思うけど、それはあくまで付随的な部分に過ぎないと思われる

 ちなみに判決の骨子は

バグダッドイラク特措法自衛隊の活動を認めていない「戦闘地域」にあたる
・空自による多国籍軍の輸送支援は他国の武力行使と一体化した行動で、自らも武力行使をしていることになる
・空輸の中には9条1項に反しているものもある
・差し止め請求は不適法
・平和的生存権を侵害された、とまでは言えないから、損害賠償請求は不当

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           O 。
                 , ─ヽ
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|__|__|__|_   __((´∀`\ )< というお話だったのサ
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◇その他昔の事件。参考に
砂川事件:米軍基地にデモ隊が立ち入って取り押さえられた。地裁は「米軍基地があるのは違憲」って言ったが、高裁・最高裁は「まぁ日本の統治に必要な行為やってことでしゃーない」との見解を示し、違憲判決を棄却した。この「統治行為論」を基にした判例が引っ張られる

長沼ナイキ事件:どこぞのブランドとは関係なく、ナイキはミサイルの名前。米軍がミサイル発射基地を作るということで、国が保安林の指定を解除したので住民が提訴。いろいろあって地裁は「自衛隊違憲」と判断。高裁は「統治行為論」を引き合いに却下。最高裁憲法問題には触れずに上告を棄却した

百里基地事件自衛隊の合憲性が争われる。水戸地裁統治行為論を採用。高裁は「憲法判断とかせんでええやんw」とスルー。最高裁もこれに同調してスルー

ちなみにイラク特措法は時限立法といって、失効が2009年8月1日と定まっている


反戦ビラ配布事件最高裁判決

   「大法廷と小法廷」
 最高裁には長官+判事14人、計15人の裁判官がいる
・大法廷:裁判官15人全員で行う。違憲かどうかの判決や、小法廷が大法廷に回した時、自分とこの判決が自分らのそれまでの判決と矛盾した時など
・小法廷:上告で上がってきた事件は、最初はここで審理される。第一、第二、第三小法廷があり、一つの法廷には5人の裁判官がいる


   「最高裁の判決は」
 上告却下。表現の自由と言っても手段が公共の福祉に反するようでは困るという話。自衛隊宿舎の管理権、自衛隊員の「平穏に生活できる権利」を乱したとして住居侵入罪
 いつものことだが表現の自由」と「公共の福祉」は対立する。権利と権利のぶつかり合いを調整するのが法の役目。フランス人権宣言にも書かれているとか

*1:最後であり最大の宗教戦争。また最初の国際戦争。ドイツ地域内での新旧教の対立が飛び火。ハプスブルク家vsブルボン家の政治的対立が加わり、泥沼化した。スウェーデン王グスタフ=アドルフ、傭兵番長ヴァレンシュタインらが有名

*2:フランスのJ.ボダンの定義によれば国家とは「領土・領民・政治体制」の三拍子揃った存在(後に「外交能力」も定義に加わる)主権は「独立性・最高性」など。大雑把に言うと「国の基本的権利」みたいなもの。現社における最重要多義語

*3:防衛・回復・刑罰など正当(っぽい)理由がないと戦争しちゃいけないよ!っていう話。「正式戦争」は別で、国家の最高権力者が宣戦布告して堂々と始める戦争のこと。国際法的には宣戦布告を行っているか否かで、その後の対応が変わります(ex.満州事変は宣戦布告なし。だから形式の上では「戦争していない」ことになり、アメリカの中立法(戦争中の国とは一切貿易しないよ!)に引っかからなかったため、アメリカとの貿易を続けることができた。もっともアメリカもしっかり逆手にとって蒋介石を支援することで、日本に制裁加えてはいるんですけどね)

*4:動機より戦闘手段・方法を国際法で規制するって考え方(ex.地雷、クラスター爆弾)一長一短ある

*5:国連は連盟の反省から、大国一致による実効力がある国際平和の維持をはかろうとしている

*6:ちなみに常任が「これは実質事項じゃない!」と言っちゃうこともできる

*7:朝鮮戦争が起こった時、ソ連が不参加のまま安保理は国連軍の派遣を決議し、実際に送り込んだが、ソ連が戻ってきて拒否権を発動させまくったせいで、国連軍がマトモに機能しなくなった。それを見かねたアメリカが作った、というわけです

*8:国連憲章にはないけど、6章の平和的解決と7章の強制措置の中間として「6章半的」といわれている。目的は紛争の鎮静化であり、中立的な行動が必要。「お前が悪い!しばく!」が正式の国連軍ならば、「とりあえず喧嘩すんな!」がPKO