ホッシュ

 保守勢力は多々あるが、リベラルに思える学問の世界も実は非常に保守的なものだ。

 考えてみれば分かる話だが、科学界において過去の通説を打ち破るような革新的な発見というのは、通説に基づき理論を組み上げてきた科学者たちにとっては自らの努力を無にされるものに等しい。信じていたものに裏切られるような話だ。

 原子論を提唱したボイルがアボガドロの分子論を一切認めようとしなかったことからも窺えるだろう。彼が分子論の合理性を理解出来なかったはずはない。おそらく彼は自らの「正しい」学説にケチがつくのがイヤだったのだろう。

 科学者は真理が第一と考えるはずだ、と思いたいところだが、考えたら別に彼らは聖人でも哲学者でも何でもない。科学者であるためには人格者である必要はない。悲しいがそういう「セコい」話があっても不思議ではない。

 政治家などの保守は自分の利権とか信念とかに基づくものだが、科学者の保守は自分の全てを否定されるかもしれないっていう更に深いところからの話なんだろう。そういうのだけに余計にタチが悪いものだが。



 って話を親父としていた。